高齢者の便秘は危険!排便しないとどうなる?
高齢者の方々にとって、便秘は単なる不快な症状ではありません。
高齢者の便秘が続くと、腸内環境が悪化し、免疫力が低下するだけでなく、大腸がん・心血管疾患・慢性腎臓病など、重大な合併症に発展することもあります。
シニアは活動量の減少・食事量の減少・便意を感じにくくなる・薬の服用などの原因で便秘が起こりやすいため、対処方法を知っておくことが重要です。
本記事では、高齢者の便秘がなぜ危険なのか、放置して排便しないとどうなるのかを解説し、具体的な対処法についても解説します。
目次
高齢者が便秘になりやすい理由は?
高齢者は便秘になりやすいです。加齢に伴う身体機能や生活習慣の変化に関係しています。
まず、筋力の低下により、排便に必要な腹筋や骨盤底筋の力が弱くなります。また、便意を感じる感覚が鈍くなることで、適切なタイミングでの排便が難しくなります。
食事量や水分摂取量の減少による、便の減少および腸内細菌バランスの崩れも見逃せません。
加えて、高齢者が服用する薬の中には、副作用として便秘を引き起こすものもあります。
これらの要因が複合的に作用することで、シニアは便秘になりやすい傾向なのです。
高齢者の便秘は危険!主な健康リスク5つ
高齢者における便秘は、ただの不快感にとどまらず、以下のような重大な健康リスクを引き起こす可能性があります。
1. 免疫力の低下
便秘が続くと、腸内に便が長期間滞留し、悪玉菌が増えて腸内環境が乱れやすくなります。悪玉菌が生成する有害物質が腸の壁から吸収されると、全身に巡り、免疫機能を低下させます。これにより風邪や感染症などにかかりやすくなるほか、体全体の健康が影響を受けやすくなります。
2. 心血管疾患リスクの増大
腸内環境の乱れは、腸内で生成された有害物質が血液を通じて血管に炎症を引き起こしやすくなり、結果的に高血圧や動脈硬化の原因となることがあります。高齢者にとって心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)の発症リスクが高まるため、便秘は決して軽視できません。
3. 大腸がんのリスク上昇
便秘が長期間続くことで腸内の便が腸壁を圧迫し、腸粘膜に炎症が発生しやすくなります。これにより、腸細胞の異常増殖が促進されると、大腸がんの発症リスクが増加します。特に高齢者はがんの発症リスクが高いため、便秘は早期に解消することが重要です。
4. 慢性腎臓病のリスク
便秘により発生した毒素が血液に乗って腎臓へ運ばれることで、腎臓に負担がかかりやすくなります。この状態が長く続くと腎機能が低下し、慢性腎臓病を引き起こすリスクが増加します。腎臓は全身の老廃物を排出するため、腎機能が低下すると健康に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。
5. 憩室炎
憩室炎とは、腸壁の一部が袋状に膨らむ「憩室」に便が詰まり、炎症を起こす病気です。高齢者に多く見られる疾患であり、便秘が続くと発症リスクが増します。憩室炎になると腹痛や発熱が起こり、重症化すると腸が大きく傷つく危険もあります。
なお、クリニックや公的機関でも、高齢者の便秘について注意喚起をしています。(参考:西春内科、長寿科学振興財団)
高齢者が排便しないとどうなる?便秘が体に及ぼす悪影響
高齢者が排便しないとどうなるでしょうか?
上述した病気リスクがあるだけでなく、全身の健康に多くの悪影響を及ぼします。
悪影響の種類 | 内容と影響 |
---|---|
腸内環境の悪化 | 腸内で悪玉菌が増加し、腸内フローラのバランスが崩れる |
免疫力の低下 | 腸内環境の悪化が全身の免疫機能に影響し、感染症のリスクが上がる |
腹痛・膨満感 | 腸内ガスが溜まりやすくなり、腹痛や膨満感を引き起こす |
心血管リスクの増加 | 便秘によって血圧が上昇し、心臓や脳への負担が増える |
精神的なストレスの増加 | 排便困難が続くことで不安やイライラ感が増し、精神的にも悪影響 |
(1)腸内環境の悪化と免疫力の低下
便が腸内に長時間とどまると、腸内で悪玉菌が増加し、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)が崩れます。腸内環境が悪化すると、全身の免疫力が低下し、感染症やアレルギーが発生しやすくなります。
(2)腹痛や膨満感などの不快な症状
便秘が続くと腸内でガスが溜まり、腹痛や膨満感といった不快な症状が出やすくなります。これにより、食欲が減少し、栄養不足に陥ることも。特に高齢者では、栄養不足が体調の悪化やさらなる病気のリスクに繋がりかねません。
(3)心血管リスクの増加
便秘により腹圧がかかると、一時的に血圧が上昇し、心臓や脳への負担が増します。便秘が原因で血圧が急上昇する「便秘性高血圧症」は、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めるため、特に注意が必要です。
(4)精神的なストレスの増加
排便ができない不安やストレスは、精神面にも悪影響を及ぼします。排便が困難な状態が続くと、イライラや不安感が増し、生活の質が低下してしまうため、便秘を軽視せずに早期に解消することが大切です。
高齢者の便秘はどうすればいい?対処方法5つ
高齢者の便秘解消には、無理のない方法が重要です。
以下、便秘解消のためにどうすればいいのか、5つの対策を紹介します。
(1)食生活の改善
食物繊維の摂取:食物繊維は便を柔らかくし、排出を助けます。野菜、果物、全粒穀物などを積極的に取り入れましょう。
水分補給:高齢者は喉の渇きを感じにくく、水分不足に陥りがちです。1日1.5~2リットルの水を目安に、こまめな水分補給を心がけましょう。
(2)適度な運動を取り入れる
運動は腸の蠕動運動を促進し、便通を改善します。高齢者にはウォーキングや軽い体操がおすすめです。毎日15分程度の運動から始め、無理なく続けることが大切です。
(3)ストレス管理
便秘は精神的なストレスとも関係が深いため、趣味やリラクゼーションなどでリラックスする時間を確保しましょう。趣味に没頭したり、深呼吸やストレッチなどで心身のバランスを整えることも効果的です。
(4)乳酸菌サプリメントの活用
乳酸菌サプリの活用も有効です。乳酸菌は腸内の善玉菌を増やし、腸内環境の改善をサポートします。ただし、加齢により腸内の善玉菌が減少し、効果が表れるまでに時間がかかるのがデメリットです。その点、熱や酸の影響を受けず、体内に直接取り入れられる「乳酸菌生産物質のサプリメント」は特に有効です。また、サプリは手軽に摂取できるため、日々の食事で乳酸菌を十分に摂るのが難しい場合でも役立ちます。
(5)医師への相談
慢性的な便秘に悩む場合、無理に市販薬で解消しようとせず、医師に相談しましょう。特に薬の副作用が疑われる場合は、医師に相談することで適切な治療や薬の調整を受けられます。
【まとめ】高齢者の便秘:リスクと対策
今回の記事では、高齢者の便秘問題について解説してきました。
ただの便秘だと思って排便しないまま対策しないでいると、深刻な健康リスクをもたらす危険性があります。具体的には、腸内環境の悪化、腸閉塞、大腸がん、腎臓病、痔や裂肛の発症、さらには認知機能の低下やうつ病のリスク増加など、様々な健康問題につながるのです…。
しかし、怖がり過ぎる必要はありません!
十分な水分摂取、食物繊維を含む食事、乳酸菌のサプリメント、適度な運動習慣を心がけることで、健康的な排便に繋がります。もちろん、痛みや苦しさやその他症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することも重要です。
本記事を参考に、快適で健康的な毎日を過ごしていきましょう。